ヘッジファンドLTCMの本
1990年代の少し古い話なのだが、古さを全く感じさせず楽しめた。
以前に一度読んだことはあるが今回は旅行中にじっくりと再読してみた。
投資についてのある程度深い知識がないとあまり面白くないかもしれないが、それでもジョンメリウェザーをはじめとするLTCMの個性的なメンバーの話は物語としてもとても面白い。
ウォール街のトレイダー気質やインベストメントバンカーとも異なる、内向きでシャイな頭脳集団がLTCMのファンドマネジャー達である。
金融工学を前提にしたモデルに従って売買するのは今では当たり前であるが、この当時はまだトレイダーというのは殆ど天性の勘のようなもので売買していたようで、LTCMはトレイダーの姿を変えた走りだと思う。
これだけの頭脳と資金がありながら最終的に失敗したのは、一番の原因はやはりレバレッジのかけすぎに尽きると思う。ゲーム感覚でチャンスがあればどんどんと儲けたい気持ちは分かる。しかし資金効率を悪化させても常に余裕を持たせておくことが重要だと思う。
個人的には今は現物しかやっていないのでレバレッジで破綻するリスクはない。以前は先物をやっていた。それで何年かに一度酷い目にあった。
メリウェザーはLTCMの後もLTCMの仲間とファンドを立ち上げ、途中まではかなりうまくいったようだが、結局リーマンショックの時にLTCMほどひどくはないにせよ破綻したようだ。
アリの社会でも30%は働いていないということが言われるように、資金も一定割合は遊ばせるのが重要。遊びは非効率ではなく、むしろ遊びが役に立っていると考えられる。
これは人生においても同じだと思う。仕事ばかりでは仕事の効率が悪い。遊びがあってこそ仕事もいきる。実際に遊んでいる最中にアイデアを思いつくことも多い。
もう一つLTCMの破綻の原因は貪欲になりすぎて、自分の得意とする領域(債券のアービトラージ)以外に、自分の優位性が保てない領域に進出していったことだと思う。
株式と債券は全く別モノなのに、債券トレーダー達が債券だけではファンド規模に対して十分なリターンが望めなくなり、株式へと進出していった。これも破綻の大きな原因の一つである。
自分の得意な領域から外れたことが原因の一つだと思うが、得意な領域を広げていくことも大切である。LTCMの頭の良い連中なら他の領域でもマスターしやすい。しかしそれでも数学的に解決できる領域とそうでない領域がある。
これは自分にも当てはまる。自分の得意な領域で十分な投資機会がない時にどこまで妥協するか?あまり自信はないし、得意ではないが、他にチャンスがないから投資をするのか、それともじっくりとチャンスを待つのか。
自分の得意な領域でチャンスがくるのをじっと待つことは結構難しい。あまり自分には自信はないかも。それでも多少臆病になるべきだろう。